MTFによる光学機器の性能評価#2 二点分解能との違い

 前回のおさらい

•信号の細かさの度合いは、空間周波数で表される。

•ボケの強さは、コントラスト応答で表される。

•空間周波数とコントラスト応答の関数がMTFである。

 

 前回、MTFは空間周波数とコントラスト応答の関数であることを説明した。今回は解像度と分解能の違いを説明する。

 

「解像度」の語義の混乱

 ネット上に限らないが、解像度の語義の混乱がよく見受けられる。古株のカメラマニアには解像度イコール二点分解能と考えている方がかなりいる。かつて日カメラメーカーが、レンズの性能表示に二点分解能を用いた影響が今に残ってるようだ。

 ところが、分解能は非常に高い空間周波数領域で評価され、写真表現とはほとんど関係がない。写真表現への寄与が大きいのは、もっと低い空間周波数領域だからだ。このため近年では、空間周波数とコントラスト応答の関数であるMTFが解像度評価に用いられるようになった。二点分解能は現在でも限界解像度として評価の対象になることはあるが、あまり重視されていない。

 

分解能と解像度

 現代においては解像度がMTFで表現されることが多い。解像度は関数として捉えられている。かつて用いられた、二点分解能を用いた解像度評価が何故廃れたかから、話を始めたい。

 

二点分解能

 かつては二点分解能が解像度とされていた。ボケがガウス分布すると仮定すると、二点間の距離がFWHM(full width at half maximum 振幅の1/2におけるボケの広がりの幅)以下になると、分離できなくなる。Fig.1の(c),を参照頂きたい。二点(線)間の距離とFWHMが等しくなると、並んだ三つのピークがひとつにつながり分離できなくなっている。分離できる限界を二点分解能という。

 

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      Fig.2.1 線線源の間隔とその見え方 *1 pp.885

 

 あるレンズの解像度が100本だとか、200本だとか言われていたのは、この二点分解能だ。ところが、分解能は写真においてはあまり意味がない。フィルムの分解能がレンズの分解能を大きく下回っているからだ。

 

銀塩フィルムの分解能

 Fig.2に銀塩フィルムのMTFを示す。

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      Fig.2.2 銀塩フィルムのMTF曲線 *2 pp.8 21.MTF曲線

 

 velvia50のデータシートから引用した。velviaは超微粒子フィルムだが、50本/mm以下でコントラスト応答が50%を切る。FWHMで分解能を規定した場合、40本/mm程度が二点分解能となる。これより空間周波数が高い信号は、レンズを通過できてもフィルムには記録できない。カメラシステムが写真の出力を目的としている以上、フィルムに記録できない空間周波数領域でレンズの性能評価をしても意味がない。(もっとも、二点分解能が高ければ、フィルムで記録可能な空間周波数領域でのコントラスト応答が優れていることが間接的には推定できる。しかし、具体的な解析が何も出来ないので、指標としての価値は高くない。)フィルムの分解能の範囲内で評価するのがリーズナブルである。

 

MTFでの解像度評価への移行

 こうした理由から、写真における解像度の評価には、上を見て30本程度まででのコントラスト応答を用いるのが適当と考えられるようになった。写真表現は空間周波数の上端だけでなく、そこから下の領域のコントラスト応答によって左右される。低い空間周波数領域から高い空間周波数領域まで連続的なコントラスト応答の評価が行われるようになった。 

 すなわち現代においては、解像度は関数で表されるのである。MTF(Modulated Transfer Function)が"Function"であるのは、連続した空間周波数で評価していることを示している。

 様々な空間周波数でのコントラスト応答を一本の曲線にまとめればMTFが得られる。MTFが得られればボケの性状*3もある程度予想できるため設計上有用でもある。このことは次回扱う。

 一般消費者向けには、Zeissが80年代にMTF線図を示すようになり、各社が追従し現在に至っている。多くのメーカーが高空間周波数側は30本/mmで評価しているのは、フィルムのコントラスト応答がそのあたりで頭打ちになっているからだ。では、デジタルでも同じ空間周波数で評価して良いのだろうか。それは次回以降考察していこう。

 

今回のまとめ

•分解能は二点分離の限界を表す。

•フィルムの二点分解能はレンズの二点分解能より低い。

•カメラシステムの解像度評価に二点分解能や限界解像度は有用ではない。

 

*1:尾川浩一. SPECTにおける画質劣化とその補正 IV コリメータの開口. 映像情報メディカル,Vol.34,No.9,2002

*2:富士フィルムイメージング株式会社. Product information bulletion フジクローム Velvia 50 プロフェッショナル[RPV 50]

*3:アウトフォーカス部のボケはMTFでは評価できない