「ローパスフィルターレス」の正体

 撮像素子のピクセルピッチに対して十分に解像度が低いレンズを組み合わせることで、ローパスフィルタを省略したコンパクトデジカメが現れたと指摘したのは2012年だったが、最近ではローパスフィルタレスがレンズ交換式カメラへ広がりを見せている。

 

 最近のコンパクトデジカメでは素子の小型化と画素数の向上によって画素の微細化が進み、ナイキスト周波数が非常に高くなっている。ところがレンズの解像度は頭打ちだ。販売価格低下を受けたコスト削減の結果、むしろ精度は劣化しレンズの性能は落ちている。画素微細化による回折の寄与も無視できない。センサーのナイキスト周波数に対して、レンズの解像度が充分に低い関係が成り立っている。

 すなわち、レンズ自体がローパスフィルタの役割を果たしていると言える。

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 最近になってアンダーサンプリングを標本化後に取り除く画期的な手法が開発されたわけではない。コンデジ同様、レンズ交換式カメラの画素数競争が一線を越えただけである。ローパスフィルターを省いたボディを世に出せるということは、ピクセルピッチの微細化が交換レンズの解像度を超えたことを意味する。

 

 ここに至り、ユーザーサイドから見て不可思議とも思える現象が起きる。

 

 ローパスフィルターを装着した低画素数ボディと、ローパスフィルタを省略した高画素数ボディ、前者の方がモアレが出やすいというのだ。

 

ところが、α7とα7Rをまったく同じシーンで同じ撮影条件で撮り比べてみると、ローパスありのα7のほうに偽色/モアレがぽこんぽこんっと出てくる。α7Rでは出てこない。どーゆーことなんだろう、これ? 

 α7とα7Rとモアレ/偽色

 

 これはα7Rの撮像素子の画素ピッチがレンズの解像度より狭いことと、レンズの解像度はα7の画素ピッチより高いことの二点を示している。

 

 α7Rの撮像素子の画素ピッチがレンズの解像度より狭いことは、135判3,640万画素のα7Rの画素ピッチが規定するナイキスト周波数が、撮り比べに用いたレンズの解像度より高いと言い換えられる。下世話な言い方をすれば、レンズが負けている状態だ。

 

 では、レンズの解像度がどのあたりにあるかというと、α7でモアレが出たという事実から135判2,430万画素が規定するナイキスト周波数を超えていることがわかる。この画素数なら、レンズが勝っているということだ。

 

 二つボディの結果から、比較に用いたレンズの解像度は、135判2,430万画素相当以上 3,640万画素相当以下と推測される。繰り返しになるが、まとめる。レンズの解像度がα7Rの撮像素子のナイキスト周波数をを下回っているがために、同機と組み合わせたときにはモアレが生じなかった。一方α7では、レンズの解像度が撮像素子のナイキスト周波数を超えていたからこそモアレが生じた。

 

 レンズの解像度が撮像素子のナイキストを超えていればモアレは当然発生する。これを避けるためレンズと撮像素子の間に光学ローパスフィルターが挿入されている。α7にはローパスフィルターが入っているにもかかわらずモアレが生じてしまったのは、カットオフ周波数の設定または、カットオフ特性に難があることをまず疑う。